子供が死んで嘆き悲しむ母親が、お釈迦様に「この子を生き返らせて下さい」と、すがるように言いました。すると、お釈迦様は「わかった。それでは、今まで一度も死者を出したことのない家から芥子の種をもらって来なさい。そうすれば、その子を生き返らせる薬を作ってあげよう」と、おっしゃいました。母親は町中を回りましたが、死者を出したことのない家など一軒もありませんでした。母親は、愛する者を失う悲しみを誰もが心に秘めながら生きているのだと悟り、出家してお釈迦様の弟子になったということです。
入院していた父が亡くなり、以前に聞いてから心にずっと残っていたこのお話のことを考えました。
お釈迦様は「励まし」の名人なのですね。特別な超能力を使うのではなく、相手に対する真心から出る真剣な励ましが、苦しむ人々を救うのだと知りました。
父は入院してすぐ熱を出し、骨折からくる発熱の可能性もあるし、インフル大流行の中だったこともあり、結局熱は下がらず、一ヶ月後に亡くなりました。以前、持病の検査入院中だったご近所の高齢のご主人が、うちの両親が見舞いに行った翌日に突然亡くなられたことがありました。検査入院ですから、それまで普通にすごされていて、ご家族もまさか亡くなるとは思ってもみなかったご様子。見舞った両親も「昨日はお元気そうだったのに」と驚いていました。入院は仕方のないことですが、やりきれない思いも残ります。
亡くなってからの1〜2ヶ月は、どう過ごしていたのか覚えていないほど。なにしろ、自分が中心になって親の葬式を出すのは初めてですから。(皆さん、そうですよね。)ネットがあるので、分からないことが調べられて、その点では助かりましたが、色んな手続きが想像以上に大変でした。今もまだ残っているものがあります。
家の中の片付けはほとんど手につきません。父が使っていた物を見たり手に取ったりすると、涙が出そうになるんです。若い時はほんとうに仲の悪い親子だったので、親が死んで泣くなんてありえないと思っていました。それが、ここ十年くらい、何故かお互い人が変わったように仲良くなり、最近は介護の必要なパパが可愛くて仕方なかったです。人間て面白いですね。こんなに家族が仲良く、楽しく暮らせていいんだろうかと、いつも思うほどでした。母親を早くに亡くした子供時代は戦争を経験。苦労もいっぱいあったと思いますし、おまけに娘はこの調子(笑)。車椅子のお世話にもなって、最後はちょっとしんどい思いもしたけれど、パパの人生は大勝利だったと思います。